注目

インシデント / INCIDENTS / MALWARE / LAW ENFORCEMENT

ロシア国籍の男を起訴、Excelマクロで約8万人にマルウェア配布 — 米司法省がフリーランス向け偽アカウント255件を摘発

米国司法省北カリフォルニア地区は2026年9月1日、ロシア国籍のSearzhudin Tamirlanovich Aktulaev被告(40)を起訴したと発表した。フリーランス向けプラットフォームで255件の偽アカウントを使い、Excelの悪性マクロ経由でTVRATとDarkVNCを約8万人に配布し、半数が米国被害者だったとしている。

攻撃手法
ソフトウェア

米国司法省北カリフォルニア地区(U.S. Attorney’s Office, Northern District of California)は2026年9月1日(現地時間)、ロシア国籍のSearzhudin Tamirlanovich Aktulaev被告(40)を、フリーランス向けプラットフォームを悪用した大規模なマルウェア配布の容疑で連邦大陪審が起訴したと発表した。被告は2025年5月にキプロスで逮捕され、2026年8月28日に米国へ引き渡された。9月1日にサンフランシスコの連邦地裁で初出廷し、身柄拘束が継続されている。

何が起きたか — 255件の偽アカウントで約8万人へExcelマクロを送信

同地区の発表と起訴状によると、Aktulaev被告らは遅くとも2016年6月から2017年11月にかけて、北カリフォルニア地区に所在する著名なフリーランス向けテクノロジー企業のオンラインメッセージ基盤を悪用した。約255件の偽ユーザーアカウントを作成し、約8万人のフリーランス利用者へ悪性Microsoft Excelファイルを添付したメッセージを送信したという。

添付ファイルを開くとマクロの実行を促す内容が表示され、利用者がマクロを有効化するとインターネット経由でマルウェアがダウンロードされる仕組みだった。起訴状は、被害者の約半数が米国在住で、その多くが北カリフォルニア地区に所在していたとしている。C2(指令統制)ドメイン上に残されたデータベースからは数千人規模の被害者情報が確認され、犯行に使われたメールアカウント内の共有文書には、数百人分のECサイトのログイン情報や個人識別情報(PII)が含まれていたと同省は説明している。

使われたマルウェア — TVRATとDarkVNCで遠隔操作

起訴状が挙げるマルウェアは2種類だ。

  • TVRAT(別名 TVSPY / TeamSpy):正規のリモート管理ツール「TeamViewer」の脆弱性を悪用して感染端末を遠隔操作するトロイの木馬。感染後はTeamViewer経由で攻撃者が端末を制御できる状態にする。
  • DarkVNC:VNC Viewerを悪用する同様の遠隔操作ツールで、機能はTVRATと類似する。

いずれも感染端末から窃取したデータをC2サーバーへ送信し、被告らがそのデータを収集して詐欺などの犯罪に利用したとされる。C2ドメインは仮想通貨で購入され、TVRATに感染した数千台の端末が米国内にホストされたC2ドメインへ定期的に通信(コールバック)していたと同省は指摘している。

捜査の経緯 — 2021年起訴、2025年逮捕、2026年引き渡し

本件の起訴状は2021年6月1日付で起訴され、被告の身柄引き渡しに合わせて2026年9月1日に開封された。被告は2025年5月にキプロスで逮捕され、司法省国際局(Office of International Affairs)の支援により2026年8月28日に米国へ引き渡された。発表は、連邦検事Craig H. Missakian氏とFBIのScott R. Schelble特別捜査官が連名で行った。次回期日は2026年10月5日にカリフォルニア北部地区連邦地裁のDonato判事の前で予定されている。

問われている罪と量刑

起訴状は、Aktulaev被告に対し次の容疑を提起している。

  • 通信詐欺の共謀(18 U.S.C. § 1349):最大20年の禁錮と25万ドルまたは利得の2倍の罰金
  • 10台以上の保護されたコンピューターに損害を与えるプログラム等の送信(18 U.S.C. § 1030(a)(5)(A)):最大10年の禁錮
  • コンピューター詐欺の共謀、不正アクセス等(18 U.S.C. § 371、§ 1030(a)(2)(C)、§ 1030(a)(4)):最大5年の禁錮
  • 加重身分窃盗(18 U.S.C. § 1028A(a)(1)):他の刑に連続して加算される2年の禁錮

同省は、起訴はあくまで嫌疑であり、被告は合理的な疑いを超えて有罪が証明されるまで無罪が推定されると付記している。量刑は有罪となった場合に、米国量刑ガイドラインと連邦量刑法(18 U.S.C. § 3553)を考慮して裁判所が決定する。

日本での文脈

同省によると、悪用されたのは北カリフォルニア地区に所在するフリーランス向けプラットフォームのメッセージ機能だった。日本でも業務委託や副業マッチングで同様のプラットフォームが利用されており、起訴状は偽アカウントから送られたExcel添付ファイルのマクロを起点に感染が広がったと説明している。


出典

この記事は、公開情報と編集部の調査・知見をもとに構成しています。内容は公開時点の情報に基づく解説であり、個別の環境への診断・対応を保証するものではありません。重要な判断では、記事内の出典や各提供元の最新情報もご確認ください。