研究・分析 / RESEARCH / DDOS
DDoSは「件数減・威力増」へ — 欧州で帯域2.3Tbpsの史上最大を記録、スーパーボットネットがけん引とLink11が報告
Link11は2026年9月3日、2026年上半期の欧州サイバーレポートを公開し、DDoS攻撃の件数が42%減少する一方で帯域・パケット数・総通信量がいずれも過去最高に達したと発表した。
欧州のDDoS対策企業Link11は2026年9月3日、2026年上半期(1〜6月)の欧州サイバーレポートを公開した。自社のネットワークに対するDDoS攻撃の件数は前年同期比で42%減少した一方、攻撃の威力を示す帯域・パケット数・総通信量の指標はいずれも過去最高を記録した。攻撃は「数」から「一撃の威力」へ重心を移しており、Link11は昨年の件数を基準に防御を設計する組織は1件の攻撃の激化を見誤ると警告している。
過去最高の威力 — 帯域2.3Tbpsは前年のほぼ2倍
2026年上半期に観測された最大帯域の攻撃は2.3Tbps(テラビット毎秒)に達し、2025年上半期のピーク1.2Tbpsから85%増加した。パケット数も毎秒3億2200万パケットと過去最高で、前年の毎秒2億700万パケットから56%増加した。半年間の累積通信量は438TBから705TBへ61%増加した。
Link11は記録更新のけん引役として、スーパーボットネットと呼ばれる大規模な攻撃基盤を挙げている。具体的には「Aisuru」とその後継とされる「Kimwolf」、そして乗っ取られたクラウドサーバーの増加である。クラウドサーバーは1台あたりに送り出せる帯域が大きく、家庭用ルーターや監視カメラの乗っ取りとは桁違いの威力を生むとしている。
件数減少の背景 — 国際的な法執行の圧力
攻撃件数の減少について、Link11は国際的な法執行の持続的な圧力によるものと分析している。2025年7月には親ロシア系グループNoName057(16)の基盤が「Operation Eastwood」で摘発され、2026年3月には米国・カナダ・ドイツの当局が合計300万台超の機器を束ねる4つの主要なIoTボットネットの指令サーバーを停止させた。
Link11のJens-Philipp Jung最高経営責任者(CEO)は「脅威は縮小しているのではなく、広がりから一撃の威力へ移行している。昨年の攻撃件数を基準に防御規模を決める組織は、1件の攻撃がどれほど速く激化するかを見誤っている」と述べている。
再攻撃の連鎖 — 30日間無事だった顧客は44%のみ
一度攻撃を受けた組織が再び狙われる傾向も強まっている。2026年上半期に攻撃の波を受けた顧客のうち、その後30日間攻撃を受けずに済んだのは44%にとどまり、前年の54%から低下した。攻撃を受けたこと自体が次の攻撃の呼び水になる構図である。
騒音を隠れみに — 大声の攻撃ほど危険とは限らない
報告書が記録した別の事例では、攻撃者が2つのドメインに対するトラフィック急増を目くらましに使い、その陰でSQLインジェクションとクロスサイトスクリプティング(XSS)の探りを静かに実行していた。この手口は、攻撃者が両方の攻撃に同じIPアドレスを使い回していたために露見した。
Link11のJag Bainsソリューションエンジニアリング担当副社長は「現在対応している危険な攻撃は、もはや大声のものとは限らない。帯域と既知の検知名だけを見ていれば、気づかれないよう作られた最も損害の大きい攻撃を見逃す」と述べている。
日本の組織への示唆 — 件数ではなく最大威力で備える
今回の報告の対象は欧州企業だが、示唆は日本企業にも当てはまる。DDoS攻撃の脅威は件数の多寡ではなく、一撃の最大威力と隠蔽の巧妙さで測られる時代に入った。Link11の指摘を踏まえれば、防御の想定は過去の件数ではなく、テラビット級の一撃と、攻撃の陰に隠れたアプリケーショ層への侵入の試みに置く必要がある。完全な報告書はLink11の公開ページから入手できるとしている。
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