規制・コンプライアンス / COMPLIANCE / SANCTIONS
米財務省がイランへの経済隔離作戦を開始 — MOIS主導の重要インフラ攻撃グループなど約60主体を制裁
米財務省は2026年8月24日、イラン体制に対する全体的な経済キャンペーン「Operation Economic Outcast」を開始したと発表した。MOIS(情報省)が指揮する重要インフラ侵害グループ、弾道ミサイル・核関連の調達網、石油収入を生む影の船団など約60の個人・組織・船舶が制裁対象となった。
米財務省は2026年8月24日、イラン・イスラム共和国とその支援者に対する全体的な経済キャンペーン「Operation Economic Outcast(経済的追放作戦)」を開始したと発表した。同省が同日公表したプレスリリースと外国資産管理局(OFAC)の措置によると、作戦はトランプ大統領の指示に基づくもので、イラン体制とイスラム革命防衛隊(IRGC)を支える経済的な生命線を断つことを目的としている。
財務長官のスコット・ベッセント氏は「第二次世界大戦のD-Dayが同盟国と共に敵を駆逐する作戦の始まりだったように、今日、我々はイランの世界的な資金のつながりに対する経済的な猛攻を開始する」と述べ、米国と歩調を合わせない主体は「衰退する体制と共に孤立を共有することになる」と警告した。
制裁の全体像 — 5セクターで二次制裁を拡大
財務省は今回、大統領令13902号に基づき、イラン経済の5つのセクターを新たに制裁対象として指定した。これにより、当該セクターで活動する、または支援する外国人も、所在地を問わず制裁対象になり得る。財務省が指定したのは次の5分野だ。
- デジタル資産:IRGCや体制内部の関係者に関連する制裁回避の取引で、暗号資産の利用が拡大していると財務省は指摘した
- 技術:イランが先端技術へのアクセスを試み、国内製造の兵器プログラムに統合しようとしているとした
- 金:公式な金融セクターが崩壊する中で、体制が急激なインフレへの対処として金の保有で通貨リヤルを支えようとしているとした
- 航空:体制やIRGCが管理する「民間」航空会社が、戦闘員の輸送や兵器・機微技術の搬送、金や現金の代理勢力への移送に使われているとした
- 海運:国営海運会社が機微な兵器部品やミサイルの前駆物質を輸送し、国営タンカーが体制や軍のために石油を違法に輸送しているとした
これらは、すでに指定されている金融および石油・石油化学セクターへの措置を補強するものだと財務省は説明している。
約60主体を指定 — サイバー・ミサイル・石油の3つのネットワーク
OFACは同日、複数の権限に基づき、イランの悪性活動を支えるネットワークとして、約60の個人・組織・船舶を制裁対象(SDNリスト)に加えた。指定の根拠は、大量破壊兵器拡散者を対象とする大統領令13382号、悪性サイバー活動を対象とする大統領令13694号(改正後)、大統領令13902号、テロ対策権限の大統領令13224号(改正後)だ。財務省が公表した内訳は次のとおりだ。
- MODAFL(国防軍需省)傘下の調達網:弾道ミサイル開発と核研究のための拡散機微な技術・機器の調達を支援するスキーム
- MOIS(情報省)が指揮するサイバーグループ:米国の重要インフラに対する広範な侵害と、金銭目的のサイバー窃取に関与したとされるグループ
- 石油収入を生む仲介・海運網:アラブ首長国連邦(UAE)、香港、中国、シンガポール、スイス、欧州など複数の法域で活動するブローカー、企業、影の船団(シャドーフリート)
財務省によると、石油関連の指定には、イラン産原油や石油製品の欺瞞的な移動と販売を可能にする国際企業も含まれる。
MOISのサイバーグループ — FBIの17人訴追と連携
財務省は、MOISが指揮するサイバーグループへの措置は、連邦捜査局(FBI)と緊密に連携したものだと説明した。FBIは2026年8月18日に、17人のイラン人サイバー関与者を対象とする上位起訴状(superseding indictment)の開封を公表しており、そのうち4人が今回の制裁対象に含まれている。
MOIS自体は、米国の国家安全保障を脅かすサイバー活動、複数のテロ組織への支援などを理由に、複数の権限で既に指定されている。今回のサイバー関連の指定は、重要インフラの侵害と金銭目的の窃取という2つの側面を併せ持つ活動を対象としたものだ。
一般ライセンスの停止と追加ガイダンス
OFACは同時に、イラン関連の一般ライセンスの運用を見直した。
- イラン一般ライセンスF(米国とイラン間の職業・ amateur スポーツ活動や交流の支援に関する特定サービス):2026年8月24日付で停止
- イラン一般ライセンスG(学術交流や特定の教育サービスの輸出入):同日付で停止
- 新たな一般ライセンスAA・BBの発行や、特定取引の段階的縮小(wind down)を認める措置
- ホルムズ海峡の通航を巡るイランの要求に応じることの制裁リスクに関する追加ガイダンスの公表
財務省は、世界各国の関係当局に対し、国務省や戦争省(Department of War)と連携したチームが直接働きかけを行い、特定したイラン関連活動を停止するための明確な期限を与えるとしている。期限内に対応しない場合は、財務省が独自に行動すると警告した。
日本企業への示唆
財務省は、二次制裁の対象が拡大したことで、イランの5セクター(デジタル資産・技術・金・航空・海運)で活動する、または支援を提供する外国人も制裁対象になり得ると明示した。OFACは、イランのために資金洗浄や制裁回避を促進する主体は、米国金融システムから遮断されるリスクがあるとしている。
日本企業がイラン関連の取引や、第三国を経由した技術・海運・デジタル資産関連の取引に関与している場合、取引先の実態確認と、OFACの最新のガイダンスおよび一般ライセンスの有効性の確認が求められる。財務省は、今回の措置を「持続的かつ体系的なキャンペーンの始まり」と位置づけており、今後も執行のペースを加速させる方針を示している。
出典
- U.S. Department of the Treasury, Press Release SB0613 “Treasury Launches Unprecedented Campaign Against Iranian Regime on Economic D-Day” (Aug. 24, 2026) — https://home.treasury.gov/news/press-releases/sb0613
- U.S. Department of the Treasury, Remarks SB0614 by Secretary Scott Bessent on Operation Economic Outcast (Aug. 24, 2026) — https://home.treasury.gov/news/press-releases/sb0614
- OFAC, Recent Actions — Release Date 08/24/2026 “Iran-related Designations; Updates to Iran-related General Licenses” — https://ofac.treasury.gov/recent-actions/20260824
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