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AIセキュリティ / AI SECURITY / THREAT RESEARCH

ラテンアメリカでAIを“運用支援”に使う二つの侵入をUnit 42が分析 — 露出したNextChatと反復生成スクリプトが手口を露見させる

Palo Alto NetworksのUnit 42は、メキシコの運輸・政府機関とブラジルの金融 sector を狙う二つのキャンペーンで、攻撃者が商用LLMとNextChatを自前インフラに組み込んで運用していたと報告した。バッチ処理の試行錯誤や連番のツール、開放されたディレクトリがAI生成の痕跡を示しつつ、運用の不手際が防御側に手がかりを残した。

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Palo Alto Networksの脅威インテリジェンス部門Unit 42は2026年9月3日、ラテンアメリカを狙う二つの侵入キャンペーンで、攻撃者が商用大規模言語モデル(LLM)を自前インフラに組み込んで運用していたと報告した。Unit 42はメキシコの運輸機関や政府省庁・自治体の水道事業者を狙った活動をCL-CRI-1131、ブラジルの金融セクターを狙った活動をCL-CRI-1163として追跡している。二つのクラスターは地理的な標的は異なるが、AIによる運用支援とSOCKS5中継網の共有という共通点を持つ。

Unit 42によると、攻撃者はClaudeやGPT-4.1などの商用LLMをNextChatのセルフホスト環境で利用し、データ窃取やプロキシ運用のトラブル対応をその場で生成させていた。一方で、NextChatの公開露出や開放ディレクトリといった運用上の不手際が、防御側にインフラ全体を可視化する手がかりを残した。

二つのキャンペーン — メキシコ政府・インフラとブラジル金融を並行して標的化

Unit 42は、二つのキャンペーンを地理と手法で区分している。CL-CRI-1131は2026年4月にメキシコの運輸組織への侵入で観測され、そのインフラは同年6月まで持続していた。攻撃者はOS標準機能を悪用するLotL(Living-off-the-Land)手法に依存し、連番のバッチスクリプトで機微データの収集と窃取を反復した。並行して、Ecuadorを含むメキシコ連邦政府の省庁や自治体の水道事業者も標的に含まれていた。Unit 42は、活動の痕跡として178.128.87.160のNextChat運用と、62.171.185.97への窃取通信を確認している。

CL-CRI-1163は2026年2月に履歴書を装ったフィッシング添付ファイルから侵入し、ブラジルの金融セクターを狙った。攻撃者は脆弱なWebサーバーを足がかりに、Go製のSOCKS5プロキシ「SockTz」や独自のリモートアクセス型トロイの木馬(RAT)を展開した。WordPressの侵害サイトからsocktz_v8.exeの取得を試み、失敗後は攻撃者管理のインフラからsocktz_v9を取得するなど、2時間以内にv1からv9までの連番実行を繰り返した。167.148.195.53の開放ディレクトリには数百件のスクリプトが置かれていた。

二つのクラスターは異なる標的と初期侵入経路を持つが、Unit 42は共通のSOCKS5中継インフラと、商用LLMを中核に据えた運用という重なりを指摘している。Unit 42は、これを単発の事例ではなく、ラテンアメリカの多様な脅威グループが独立して高度なプロキシ網とAI統合を採用し始めた地域的な趨勢と位置づけた。

AIが残した痕跡 — NextChatの運用と“反復生成”のファイル名

CL-CRI-1131では、攻撃者がSecurity Account Manager(SAM)レジストリやドメインコントローラーのNTDS.ditの窃取に繰り返し失敗し、複数のドライブでシャドウコピーを作成してからコピーする回避策に切り替えた。バッチスクリプトには書き込み成功を確認する権限チェックが挿入されるなど、試行錯誤と逐次的な修正が観察された。Unit 42は、一連の挙動をLLMによる生成と整合すると評価している。

Unit 42が窃取先の62.171.185.97を起点に調査したところ、Let’s Encrypt証明書で保護されたm-doxa-apodo.duckdns.orgなどの動的DNS群が見つかった。2026年2月27日時点では単一SAN証明書(1ドメイン)だった構成が、4月20日と6月19日には5ドメインを束ねるマルチSAN証明書へと発展し、運用の拡大を示した。サブドメインにはapodo(別名)、geo(位置情報)、intel(諜報)、vacunas(ワクチン)など標的や機能を示唆する語が含まれていた。同一ホスト178.128.87.160のTCP 3000番では、複数のモデルを比較・利用できるオープンソースのNextChatインターフェースが公開状態で稼働していた。Unit 42は、ホスト内での失敗とNextChatの併存を根拠に、Active Directoryデータベース窃取の回避スクリプトをLLMが生成したと判断している。

CL-CRI-1163側でも、開放ディレクトリのファイル名がAI生成を示唆した。Unit 42によると、SockTzの連番に加え、exploit_creative.py、exploit_careful.py、rce_focused.pyといった形容詞付きの命名や、末尾に_outputを付した反復スクリプトが多数確認された。人手による命名というより、言語モデルが逐次的に生成した特徴が表れている。Unit 42は、これらの命名と短時間でのバージョン反復を、LLMが運用を支援した証左としている。

Unit 42は、AIを運用インフラに統合する発想自体は巧妙だが、NextChatをインターネットに公開したことが致命的な運用の未熟さだったと指摘する。プロンプト履歴やステージング用スクリプト、運用の手引きそのものが外部から可視化され、防御側がキャンペーン全体を再構成する手がかりになった。Unit 42は「AIが戦術的な回避策を与えても、運用を誤れば防御側に利得を与える」と述べている。

対策と示唆 — AI運用の露見は防御側の好機

Unit 42は、顧客環境ではAdvanced WildFire、Advanced URL Filtering、Advanced DNS Security、Cortex XDR/XSIAMが本件の脅威の検知・防御に有効だと説明している。Unit 42は、侵害の疑いがある場合はUnit 42インシデントレスポンスへの連絡を推奨している。

今回の分析は、LLMが攻撃の参入障壁を下げ、複雑なポストエクスプロイト運用を効率化する一方で、運用の痕跡を残しやすいことを示した。Unit 42は、Gambit SecurityやCloudSEKによる先行報告とも整合するとしつつ、AI生成の反復性や命名規則、証明書やDNSの運用パターンに注目することで、地域をまたがる複数キャンペーンの関連付けが可能になると述べている。

出典

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