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脅威動向 / THREATS / SUPPLY-CHAIN EXPLOITATION

WizがJFrog Artifactoryの脆弱性3件の実攻撃を確認と報告、2件連鎖で管理者権限を奪取しRust製バックドアを設置

Wiz Researchは2026年9月10日、JFrog Artifactoryの脆弱性CVE-2026-42016、CVE-2026-42018、CVE-2026-82329が実際に悪用されていると報告した。攻撃者は2件を連鎖させて未認証から管理者権限を奪い、管理者アカウントの作成やRust製バックドアの設置を行っていた。

攻撃手法
ソフトウェア

要点

  • クラウドセキュリティ企業のWizの調査部門Wiz Researchは2026年9月10日、ソフトウェア部品の保管庫であるJFrog Artifactoryの3件の脆弱性(CVE-2026-42016、CVE-2026-42018、CVE-2026-82329)が実際の攻撃で悪用されていると報告した。報告者は同社のShahar Dorfman氏ら4人だ。
  • 攻撃者は2026年8月15日から9月8日にかけて、2件の脆弱性を連鎖させて認証をすり抜けた。未認証の要求で内部の匿名利用者トークンを取得し、それを管理者権限のトークンに交換する2段階の手順で、一部の事例では最初の要求から5分弱で新たな管理者アカウントが作られていた。
  • 侵害されたサーバーでは、管理者アカウントの残置、コード実行が可能な悪性プラグインの設置、Rust製バックドアの投下、設定情報やクラスター参加鍵の持ち出しが確認された。Wizは、修正版への更新と、管理者操作の記録の確認を求めている。

連鎖の仕組み:単独では管理者になれない2件の組み合わせ

今回の連鎖の起点はCVE-2026-42018だ。Artifactoryが、匿名アクセスを無効にしている場合でも、未認証の要求者に対して内部の匿名利用者のトークンを返してしまう不具合である。攻撃者はこのトークンで匿名利用者に許された範囲の資源に触れられる。

2件目のCVE-2026-42016は、トークンの権限範囲の検証不足だ。Artifactoryはトークンの署名と発行者は検証するが、そのトークンに本来許された権限範囲を正しく強制していなかった。そのため、権限の低い正規トークンを持つ攻撃者が、管理者範囲の操作を実行できた。

Wizが観測した攻撃はどれも同じ形だった。まず POST /access/api/v1/aws/token/ に未認証で要求を送り、匿名利用者のJWTを受け取る。次に POST /access/api/v1/tokens でそのJWTを管理者範囲のトークンに交換する。交換後のトークンは利用者名が匿名のまま管理者権限を持つため、その後の管理者操作は記録上 token:anonymous という名義で残る。Wizは「どちらの脆弱性も単独では管理者権限を与えないが、組み合わせると未認証の要求が管理者トークンに変わる」と説明している。

3件目のCVE-2026-82329は、既定の設定のまま使っているArtifactoryに対する認証バイパスで、単独で管理者権限の奪取が可能だ。Wizは同脆弱性をクリティカルな深刻度と位置づけている。Wizは9月1日から9月8日にかけて複数の攻撃者による悪用成功を確認した。手口は POST /access/api/v1/registry/join への未認証要求で管理者トークンを直接取得するものだった。本サイトでは9月1日にこの脆弱性の悪用開始を既報として伝えている。

侵害先で行われたこと:管理者アカウント残置とバックドア設置

Wizによると、侵害後の行動は攻撃者ごとに異なり、単一の攻撃者がすべての手順を実行したわけではない。複数の侵害先で観測された行動は次の通りだ。

  • 持続的な管理者アカウントの作成。一部は Nxploited_0xTerrorsvc_ で始まる実証コード風の名前だったが、jfrog-distributionrepo-service といった正規に見える名前を使う攻撃者もいた。作成した利用者に攻撃者自身のSSH鍵を登録する事例もあった。
  • Artifactoryのプラグイン機構を使った悪性Groovyプラグインの設置によるサーバー上での任意のコード実行。プラグイン実行エンドポイント経由で偵察やファイル列挙のコマンドが実行された。
  • ドロッパーによるバイナリの取得と実行。HTTPで取得したバイナリを /tmp などの誰でも書き込める場所に置き、C2通信を確立した。複数の事例ではC2機能を持つRust製の独自バックドアが投下された。
  • 設定情報の持ち出し。システム設定の読み取りや、Artifactoryのノード間で共有するクラスター参加鍵の窃取が確認された。

Wizは攻撃の痕跡(IoC)として、悪用に使われたIPアドレス 93.104.155[.]133 や、ペイロード配布に使われた log.gitclone[.]org3.88.162[.]79 などを公開している(マスク表記は本サイトによる)。

影響範囲:公開時点で7割近くの組織に脆弱なインスタンス、修正の進みは遅い

Wizの観測データによると、各脆弱性の公開時点でJFrog Artifactoryを運用する組織の67〜69%に脆弱なインスタンスが少なくとも1つ存在した。深刻度の低い2件の修正は進みが遅く、最初の公表から6週間後も59%の組織がCVE-2026-42016に脆弱なままで、CVE-2026-42018も4週間で69%から62%にしか減らなかった。一方、深刻度が最も高いCVE-2026-82329は公表から2週間で67%から49%まで低下し、危険度の高さが対応を促したとWizは分析している。

影響を受けるのはセルフホスト版のArtifactoryで、版枝ごとに修正版が配布されている。Wizが示した修正版は7.111.21、7.117.28、7.125.20、7.133.29、7.146.38、7.161.20だ。米CISAもこれらの脆弱性を悪用確認済み脆弱性(KEV)カタログに追加している。

Wizが求める対応:更新、公開インスタンスの優先、記録の確認

WizはArtifactoryを運用する組織に対し、利用中の版枝に対応する修正版へできるだけ早く更新するよう求めている。あわせて次の対応を求めている。

  • 未認証で外部から到達できるArtifactoryを優先し、信頼できる利用者とシステムだけが接続できるよう通信を制限する。
  • 認証と管理者操作の記録を確認し、想定外の特権アクセスがないか調べる。具体的には、匿名利用者や低権限の利用者によるトークン発行(POST /access/api/v1/tokens)、利用者列挙、プラグインへの読み書きといった、名義と行動が釣り合わない操作を手がかりにする。
  • CVE-2026-82329については、/access/api/v1/registry/join への成功要求と、その前後の管理者アカウント作成や設定取得といった行動を突き合わせて判断する。

Artifactoryはビルドパイプラインが部品を取得する保管庫であり、侵害されると混入した不正部品が製品に流れ込むサプライチェーン攻撃の足がかりになり得る。Wizは本報告を「状況の進展に応じて更新を続ける」としている。

出典

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