研究・分析 / RESEARCH / TRENDS
2026年上半期に悪用された脆弱性は215件で前年比34%増 — Recorded Futureが報告、正規ツールの悪用とNFC決済詐欺が拡大
Recorded Futureは2026年9月、2026年上半期のマルウェア・脆弱性動向をまとめた報告書を公開した。実際に悪用されたCVEは215件で前年同期の161件から34%増加し、認証なしで到達可能なRCEが最多層を占めた。AIの悪用は既存手口の補助にとどまる一方、NFC決済詐欺や開発環境へのサプライチェーン攻撃が目立った。
Recorded Futureの調査部門Insikt Groupは2026年9月、2026年上半期(H1)のマルウェア・脆弱性動向をまとめた報告書を公開した。実際に悪用が確認されたCVEは215件で、前年同期の161件から34%増加した。目立ったのは技術的な新奇性ではなく、正規ツールや信頼された基盤、日常業務の流れに紛れ込む手口の広がりだ。AIの悪用は観測が増えたものの、既存手口を補う段階にとどまるという。
数字で見る上半期
報告書の要点は次の通りだ。
- 悪用CVEは215件で、前年同期の161件から34%増えた
- 認証なしで悪用可能な脆弱性146件のうち142件がネットワーク経由で到達可能だった
- RCE(リモートコード実行)82件のうち60件が、ネットワーク到達性と認証不要を兼ね備えた
- 攻撃者は新規開示と旧来の脆弱性の双方で、確立済みの侵入後の定番手順を使い回した。ベンダーの深刻度評価よりも、到達可能性と影響範囲が運用リスクの指標になる
企業OSやアプリケーションフレームワーク、ネットワーク・セキュリティ管理製品に悪用が広がった。最も影響が大きい事例は、到達可能性が高く、前提条件が少なく、コード実行に至る組み合わせだった。
マルウェア動向:常連RATとNFC詐欺
マルウェア面では、リモートアクセス型トロイの木馬(RAT)の突出が続いた。Insikt Groupの報告件数でもRATが首位で、検体提出データではAsyncRATがハッシュ数とC2構成の双方で最多だった。AsyncRAT、Cobalt Strike、XWorm、Stealc、REMCOS RATは2025年上半期から2026年上半期まで上位10位に残り、顔ぶれの固定化が進んだ。
モバイルで最も注目すべき傾向はAndroidのNFC悪用決済詐欺だ。NFCShareやNGateといったファミリーが端末のNFC機能を悪用し、決済カード情報の窃取や非接触決済の中継、ATMからの現金引き出しに使われた。日本でも非接触決済が普及しており、法人支給端末の管理は他人事ではない。
ランサムウェア攻撃者は、ClickFix型のソーシャルエンジニアリング、公開アプリケーションの悪用、s5cmd・PsExec・AnyDeskといった正規ツールの悪用、被害者の復旧手段を削る手口を組み合わせた。決済分野では、信頼された第三者サービスと決済画面の改ざんを組み合わせたMagecart型の攻撃も続いた。サプライチェーン攻撃はパッケージマネージャやAI対応ツールを含む開発環境を狙い、侵害された認証情報や信頼された連携、配布経路から下流のクラウドやソフトに波及した。
AI悪用は補助段階
AIを組み込んだ攻撃は可視化が進んだが、報告書が確認した範囲では既存手口を置き換える完全自律型ではなく、補強する段階にとどまる。Insikt GroupのAIマルウェア成熟度モデル(AIM3)では、観測された活動は下位から中位(レベル1〜3)に集中し、永続化やUI操作、マルウェア開発、配送といった個別機能の支援だった。
一方で脆弱性の生態系では、AI支援の調査が報告件数を押し上げている。報告書は、この流れが今後、悪用経路の分析加速と開発コストの引き下げを通じて、修正期限の圧縮につながり得ると指摘している。
防御への示唆
Insikt Groupは防御側への優先順位を示している。
- 遠隔から悪用可能、またはコード実行に至る脆弱性を優先して対処する
- 検知は単発の事象ではなく、不審な挙動の連鎖に焦点を当てる
- 開発者の認証情報、バックアップ基盤、法人モバイル、決済環境の統制を強化する
日本の組織にとっても示唆は明確だ。深刻度スコアの高低ではなく、自社環境への到達可能性で修正の順序を決め、正規ツールが運ぶ異常(普段と違う経路の導入、定時外の遠隔接続、復旧手段への干渉)を見逃さない体制が求められる。
出典
- Recorded Future「H1 2026 Malware and Vulnerability Trends」(2026年9月) https://www.recordedfuture.com/research/h1-2026-malware-vulnerability-trends
この記事は、公開情報と編集部の調査・知見をもとに構成しています。内容は公開時点の情報に基づく解説であり、個別の環境への診断・対応を保証するものではありません。重要な判断では、記事内の出典や各提供元の最新情報もご確認ください。