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FBIが新サイバー戦略を公表 — AIで攻撃は加速、基礎対策と「常時パッチ」を強調、全拠点にICS担当配置

FBIは2026年9月10日、17ページの新サイバー戦略を公開した。AIが国家や犯罪者の攻撃を指数関数的に加速させているとし、基本的な衛生管理の徹底と四半期ごとのパッチからの脱却を呼びかけ。被害者支援の誓約や全56拠点へのICS担当配置、AIを活用した捜査のスケール化も掲げた。

要点

  • 米連邦捜査局(FBI)は2026年9月10日(米国時間9日)、新たなサイバー戦略「FBI Cyber Strategy」(全17ページ)を公開した。
  • FBI幹部は同戦略の公表に合わせ、AIが国家や犯罪者の攻撃を「指数関数的に加速」させているとしつつ、攻撃の多くは多要素認証などの基礎的な衛生管理で防げたとの認識を示した。
  • 戦略は 捜査・抑止、被害者支援、パートナーシップ、能力強化 の4本柱で構成し、常時・リスクベースのパッチ運用への転換、数分単位での自動的な脅威共有、全56拠点への産業用制御システム(ICS)担当配置、AIによる捜査のスケール化 を打ち出した。

背景 — AIが攻撃を加速、四半期パッチは通用せず

FBIサイバー部門のJason Bilnoski副部長補は、CyberScoopとBillington CyberSecurity Summitでの発言で、AIが 「攻撃者を次のレベルへ引き上げている」 と述べた。同氏は、AIによる攻撃がすでに定量的な影響を及ぼし始め、犯罪統計の新たな区分にも表れているとし、「波は来ている。まだ頂点には達していない。国家も犯罪者もAI利用を指数関数的に増やしている」 との見方を示した。

一方で同氏は、AIが関与する事案でも 「攻撃者は依然として基本的な原則、基本的なサイバー衛生の不備を突いている」 と指摘。FBIが重視する10の基本的な防御措置(多要素認証など)が徹底されれば、犯罪者と国家の双方による標的化のリスクを確実に下げられると述べた。

さらにFBIのColleen Ferranti氏は、AIモデルが脆弱性発見を加速させている現状を踏まえ、「もはや四半期ごとのパッチでは通用しない。リスクベースで継続的にパッチを当てる必要がある」 と強調。「Patch Tuesdayという考え方自体を、常時パッチへと進化させなければならない」 と呼びかけた。

FBI Cyber Strategy自体も、脅威の現状を 「国家が支援するアクターが重要インフラに潜伏し、ランサムウェアが産業を麻痺させ、AIとソーシャルエンジニアリングが侵入までの時間を圧縮している」 と記述している。

新戦略の4本柱

FBIが示した戦略は、以下の4本柱と具体的な目的で構成される。

柱I: 捜査・抑止し、コストを課す

  • Cyber Threat Teams を編成し、重要インフラへの国家の事前配置(pre-positioning)をCISAやNSA、国際パートナーと共に捜査・暴露する。
  • 選挙インフラや選挙運動、選挙事務を狙う外国アクターへの対応、米国の防衛・先端技術・研究機関を狙う知財窃取の捜査を継続する。
  • 「ベストアスリート」モデル で、権限やアクセスを持つ最適なパートナーが主導する 共同・逐次作戦 を高速かつ大規模に展開し、インフラの破壊、暗号資産の押収、ランサムウェア亜種のテイクダウンにつなげる。
  • 匿名化を図る攻撃者の 帰属(アトリビューション) を、FBIの証拠に加え、情報コミュニティ、外国パートナー、民間テレメトリ、被害報告を統合して加速する。

FBIは、Virtual Assets Unit がランサムウェア身代金や国家の侵入、詐欺収益に絡む暗号資産の追跡・押収を担うことも明記した。

柱II: 被害者を支援する

FBIは戦略の中で 「Pledge to Victims(被害者への誓約)」 を掲げ、「被害者を尊厳と敬意をもって扱い、プライバシーとデータを保護し、合衆国憲法と法令、FBIの中核的価値を厳格に順守する」 と表明。「FBIは攻撃者を追い、被害者を追わない」 との姿勢を明確にした。

具体策として、

  • 緊急の脅威共有: 検知から通知までの時間を 数日から数時間、数時間から数分 へ短縮する自動的な指標共有メカニズムを開発・配備する。
  • 迅速な事後対応: 56のフィールドオフィスと20超のCyber Assistant Legal Attaché(Cyber ALAT) を通じ、数時間以内に専門要員を派遣できる体制を維持し、被害の防御・封じ込め・復旧を支援する。
  • 専門能力の提供: 全フィールドオフィスにICSコーディネーターを配置 し、ITとOT(制御系)が交差する環境での支援を強化する。IC3の Recovery Asset Team は金融機関と連携して不正送金を凍結し、年間数億ドルを被害者に返還しているとした。
  • 報告の促進: IC3を通じた報告チャネルの信頼性向上と、地域企業との事前関係構築を進める。

柱III: パートナーシップで影響を拡大する

  • NCIJTF(National Cyber Investigative Joint Task Force) に30超の機関を統合し、Joint Ransomware Task Force(FBI・CISA共同議長) でランサムウェアのエコシステム全体に対応する。
  • Five EyesやCyber 9、Europol、同盟国のサイバー機関との国際連携を維持する。
  • InfraGard、NCFTA、NDCA などの官民連携プログラムや、CISO Academy、Cyber Executive Summits、LinCY といった幹部間の信頼醸成プログラムを継続・拡充する。

柱IV: FBIのサイバー能力を高める

  • 人材: 特別捜査官、インテリジェンスアナリスト、コンピュータ科学者、データ科学者、マルウェア解析者、暗号資産専門家、技術運用要員などを確保し、Field Cyber Resourcesイニシアチブ で全国に適正配置する。
  • 教育: Cyber Education and Training Unit(CETU) が実践的な訓練を提供する。
  • 技術: Computer Network Operations(CNO)プログラム を継続し、裁判所の承認を得た技術的手段で国家や犯罪者の活動を収集・監視・妨害する。ポスト量子暗号への移行 に備えた証拠・手口の保全も進める。
  • AIの採用: 戦略は 「FBI Cyber will deploy AI-enabled tools to triage large datasets, surface relationships, accelerate malware analysis, prioritize victim notifications, map adversary infrastructure…」 と明記。President Trump’s Cyber Strategy for America に整合する形で、エージェント型AI(agentic AI) を迅速に導入し、検知・誘導・欺瞞 にも活用するとした。ただし 人間の審査と法的統制の下で、市民的自由や正確性、運用の安全性に配慮して統合する としている。

日本の組織への示唆

FBIの指摘は米国内向けだが、日本企業にも直接関係する。サプライチェーンやクラウド経由で米国の重要インフラや取引先と接続する日本企業は、FBIやCISAが発する Joint Cybersecurity Advisory やICS関連の注意喚起の影響を受ける。戦略が強調する 「基礎の徹底」と「常時パッチ」 は、日本でも四半期や月例に依存した運用から、リスクに応じた継続的な更新への転換が求められていることを示す。

出典:

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