脆弱性 / VULNERABILITY / MIKROTIK
MikroTik RouterOSに6件の重大脆弱性「MikroTrick」— 認証バイパスから設定奪取まで連鎖、SSH公開機器が標的で更新を呼びかけ
オランダNCSCとポーランドCERT.PLは2026年9月8日と5日、MikroTik RouterOSに6件の脆弱性が見つかり、野外で悪用が確認されているとして更新を呼びかけた。SSH認証バイパスや未認証のファイル操作、TLS偽装などが連鎖して完全な乗っ取りに至るおそれがあり、修正版6.49.21/7.23.4/7.24.2への更新とSSHのインターネット公開の見直しが求められる。
概要
オランダの国家サイバーセキュリティセンター(NCSC-NL)は 2026年9月8日、MikroTik RouterOS に複数の重大な脆弱性が見つかり、野外で活発に悪用されているとして、直ちに更新するよう注意喚起を出した。標的は主に SSHサービスをインターネットに公開しているルータだとしている。
ポーランドの CERT Polska(CSIRT NASK)は 2026年9月5日、同機関の研究者 Sławomir Rozbicki氏が発見した 6件の脆弱性の詳細を公表した。MikroTik は **6.49.21(Long-term)、7.23.4(Long-term)、7.24.2(Stable)**でこれらを修正済みだと CERT.PL は説明している。複数の脆弱性を組み合わせることで、未認証の攻撃者がルータの完全な制御に至る連鎖(通称 MikroTrick)が報告されている。
対象製品と影響
対象は MikroTik RouterOS(ルータやネットワーク機器の中核OS)だ。CERT.PL によれば、影響を受けるバージョンは以下の通りだ。
- CVE-2026-67276(CWE-347: 署名の不適切な検証): 7.24未満〜7.24.2未満、7.9未満〜7.23.4未満
- CVE-2026-67277(CWE-306: 重要機能の認証欠如): 7.24未満〜7.24.2未満、7.0.0未満〜7.23.4未満、6.0.0未満〜6.49.21未満
- CVE-2026-67278(CWE-347): 7.24未満〜7.24.2未満、7.0.0未満〜7.23.4未満
- CVE-2026-67279(CWE-841: ワークフロー強制の不備): 7.24未満〜7.24.2未満、7.0.0未満〜7.23.4未満、6.0.0未満〜6.49.21未満
- CVE-2026-67281(CWE-824: 未初期化ポインタのアクセス): 7.24未満〜7.24.2未満、7.20未満〜7.23.4未満
- CVE-2026-86060(CWE-88: 引数インジェクション): 7.24未満〜7.24.2未満、7.0.0未満〜7.23.4未満、6.0.0未満〜6.49.21未満
NCSC-NL は、脆弱性を放置した場合、攻撃者がルータを完全に制御し、ネットワークの乗っ取り、通信の傍受、インターネット接続の停止など、業務に深刻な支障が生じるおそれがあると説明している。
6件の脆弱性は何が起きるのか
CERT.PL の説明を基に、6件の技術的な要点を整理する。
CVE-2026-67276 — SSH認証バイパス(RSA署名検証の欠陥)
RouterOS の SSH実装は、登録済み RSA公開鍵と認証要求を照合する際に、鍵種別と法(modulus)のみを比較し、指数(exponent)を検証していなかった。署名検証にはクライアントが提示した鍵が使われるため、登録済み鍵の法を知る攻撃者は 指数を1にした偽の鍵で署名を偽造し、秘密鍵なしで対象ユーザとしてSSHコマンドチャネルを開くことができた。
CVE-2026-67277 — 未認証でのbtest接続とメモリ露出
RouterOS は、主要セッションの認証が完了する前に 関連する btest 接続を受け入れていた。未認証のクライアントがこの状態を利用して IPv4 UDP テストを開始すると、カーネルのパケットバッファの未初期化領域が送信される場合があった。さらに、パケットサイズの検証で符号なし整数のアンダーフローが起き、異常に大きな断片化出力が生じて RouterOSカーネルの再起動につながるおそれがある。
CVE-2026-67278 — TLSサーバ偽装(X.509検証の欠陥)
RouterOS の X.509検証は、不正な RSA/PKCS#1 v1.5 署名を受け入れていた。信頼ストアに 指数 e=3 のルートCAが含まれるため、RouterOS から外部への TLS 接続を制御・リダイレクトできる攻撃者は、秘密鍵なしでルート証明書を使って 信頼された中間証明書を偽造し、任意のホスト名の証明書を発行して TLS サーバのなりすましが可能だった。
CVE-2026-67279 — SSHでの未認証ファイル操作
RouterOS の SSHは、ユーザ認証を一度も試みていないにもかかわらず、クライアントが要求した再鍵(rekey)の後に接続プロトコルへ遷移していた。これにより未認証のクライアントがセッションチャネルを開き、exec 要求を送ることができ、RouterOS の管理ファイル名前空間で ファイルの作成・上書き・再構築(設定や診断データを含むサポートファイルを含む)が可能だった。
CVE-2026-67281 — WebFigでの未認証ファイル読み取り
RouterOS の WebFig(Web管理画面)の /jsproxy パスで、新規セッションが古い未初期化の principal ポインタを保持していた。攻撃者がアロケータを操作して 十分な権限でファイル提供パスが参照するように仕向け、暗号化 URI にディレクトリトラバーサル(../)を含めることで、WebFig の名前空間を脱出し、root 所有のファイル(認証情報を含む設定ストアなど)を読み取ることができた。
CVE-2026-86060 — SSHログイン時の引数インジェクションによる権限昇格
SSH ログイン処理で、禁止文字で始まるユーザ名を扱う際の引数処理に欠陥があり、信頼された RouterOS のポリシーマスクが変更され、権限昇格に至る。悪用には、未認証の SSH セッションが RouterOS のログインヘルパーへ到達できることが条件だと CERT.PL は説明している。
連鎖(MikroTrick)で何が起きるか
単独でも深刻だが、複数の欠陥を組み合わせると **認証バイパス(CVE-2026-67276 / CVE-2026-67279)→ 設定ファイルの上書き → 権限昇格(CVE-2026-86060)→ 任意ファイルの窃取(CVE-2026-67281)**といった連鎖で、ルータの完全な乗っ取りやネットワーク全体への波及が可能になると、NCSC-NL と CERT.PL は共通して警告している。野外では既にこの連鎖を悪用した攻撃が観測されている。
修正版とNCSC・CERT.PLが推奨する対策
MikroTik が公開した修正版
CERT.PL によれば、修正版は以下で提供されている。
- 6.49.21(Long-term)
- 7.23.4(Long-term)
- 7.24.2(Stable)
NCSC-NL も同バージョンへの更新を速やかに行うよう求めている。利用しているバージョンが不明な場合は、IT管理者や保守事業者に確認するよう呼びかけている。
NCSC-NL と CERT.PL が推奨する対策(出典明記)
NCSC-NL は以下を推奨している。
- MikroTik が公開した上記バージョンへ直ちに更新する。
- SSH アクセスをインターネットへ直接公開せず、VPN 経由やホワイトリスト(アクセス元IP制限)で保護する。
- 更新が困難な場合は、ITサービスプロバイダへ速やかに相談し、緩和策の実施を依頼する。
**CERT.PL は、発見から調整・公開までの協調開示(CVD)プロセスに基づき、ベンダーと連携して修正を確認した上で情報を公開したと説明している。**同機関は追加の技術詳細を別記事で公開しており、詳細な再現条件や影響範囲の確認に役立つ。
日本の管理者が確認すべきこと
MikroTik RouterOS は中小企業やISP、拠点間VPNなどで国内でも広く使われている。NCSC-NL の指摘通り、SSHを直接インターネットに公開している機器が最も危険だ。
- バージョンを確認する: WinBox または CLI(
/system package printや/system routerboard print)で現行バージョンを確認し、修正版(6.49.21 / 7.23.4 / 7.24.2)のいずれかへ更新する。Long-term と Stable の運用方針に合わせて選択する。 - SSH公開を見直す:
/ip serviceで SSH の公開範囲を確認し、インターネット側からのアクセスを無効化するか、VPN 経由に限定する。やむを得ず公開する場合は、送信元IPのホワイトリストやポート変更、fail2ban 的なアクセス制限を組み合わせる。 - 侵害の痕跡を確認する: 不審なユーザ追加、
/file配下の未知のサポートファイルやスクリプト、/system scriptやスケジューラの変更、WebFig のアクセスログ、再起動履歴を確認する。NCSC-NL は完全な制御を奪われるおそれを指摘しており、侵害が疑われる場合は設定の初期化と再構築を検討する。
出典
- NCSC-NL「Kwetsbaarheden in MikroTik RouterOS actief misbruikt: update nu」(2026年9月8日)— https://www.ncsc.nl/alerts/kwetsbaarheden-in-mikrotik-routeros-actief-misbruikt-update-nu
- CERT.PL「Vulnerabilities in Mikrotik RouterOS software」(2026年9月5日)— https://cert.pl/en/posts/2026/09/mikrotik-routeros-cve/
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