インシデント / INCIDENT / FRAUD
偽ショップ網「DoppelCart」が11万9000ドメインで急拡大 — 2.72%の.shopを占有し正規ブランドを無差別に複製
ドイツのブランド保護企業nebtyは2026年9月7日、約11万9000ドメインで構成される偽ショップネットワーク「DoppelCart」を公開した。.shopドメインの2.72%に相当する過去最大規模のクラスターで、実在ブランドの商品画像や説明文をそのまま複製し、最大65%割引で決済情報を窃取していたと報告する。
概要
ドイツのブランド保護企業 nebty は 2026年9月7日、大規模な偽ショップネットワーク「DoppelCart」に関する調査結果を公開した。同社の発表によれば、このネットワークは 約11万9000ドメインで構成され、**.shopトップレベルドメイン(TLD)の2.72%**を占める。nebty は「ドメイン数で測った場合、公開資料としては過去最大の偽ショップクラスター」と説明している。
同社は 106,095件のHTMLページをアーカイブして分析し、共通の構築ファイルや27のECバックエンドに収束する同一基盤を確認した。偽装されたブランドは 44,182件に上り、商品カタログや画像を正規サイトから直接複製する手口で消費者を誘引していた。
どの程度大きいのか — 既知の偽ショップ網との比較
nebty は規模感を示すため、 zone snapshot(DNS上に登録された.shopドメインの一覧)と比較した。2026年9月時点の4,361,908件の.shopドメインのうち、118,787件がDoppelCartに属すると同社は集計した(全体119,000件のうち.shop以外も含むため総数は約11万9000件)。
この規模は他に公開されている偽ショップ網を大きく上回る。nebty の比較表によれば、SRLabsが2024年に報告した「BogusBazaar」は75,000件超(うち2024年4月時点で約22,500件が稼働)、CTM360の「FraudWear」は3万件超(同時稼働約8,000件)、Netcraftの「Fibergrid」は16,700件(2026年4月時点で稼働中)だった。nebty は「観測期間や計数方法は異なる」と断った上で、DoppelCartが突出していると指摘している。
手口 — 正規ブランドを丸ごと複製し65%割引で誘引
DoppelCart の偽ショップは、実在するブランドの 商品名、詳細な説明文、画像素材をそのまま複製していた。nebty が検証した事例では、製品の機能や構造を説明する文章が一字一句同じだったケースや、アーカイブされたHTMLが正規ブランド自身の画像サーバ上のファイルを直接参照していたケースもあった。訪問者にとっては見慣れた製品が並ぶため、正規店と見分けがつきにくい。
これらの複製された素材に 最大65%の割引表示を組み合わせ、特価に見せかけて購入を促す。なじみのある商品画像と価格優位性の組み合わせが、詐欺の説得力を高めていると nebty は分析している。
決済ページでは、カード番号や有効期限、セキュリティコード、氏名、住所、連絡先といった決済関連情報を詐取する仕組みが確認されていると nebty は説明している。偽ショップのチェックアウトコードは入力内容を攻撃者の管理基盤へ送信する構造だとしている。
さらに、偽ショップのページには 正規ブランドのカスタマーサポート連絡先が表示されていることがあり、商品が届かない購入者が正規ブランドへ問い合わせる構造になっていた。正規ブランド側は注文も代金も受け取っていないにもかかわらず、苦情対応や信頼低下といった二次被害を負うと nebty は指摘している。
なぜデータベースを公開したのか
nebty は、企業がベンダーへ連絡する前に自社ブランドの被害有無を確認できるよう、調査データベース全体を公開した。ブランド名やドメインで検索でき、検証済みのエントリ(ブランド名が検出されたもの)から閲覧できる。フィルタで未検証の疑い例や解決不能なドメイン、除外済みエントリも参照できるため、行数が確認されたクラスター規模を上回る場合があると同社は説明している。
同社は企業向けにテイクダウン支援の窓口を、ジャーナリストや研究者向けに生データの提供窓口を用意した。nebty によれば、多くの店舗が同一のビルドファイルや少数のECバックエンドを共有しており、同一基盤による大量展開が確認されている。
日本の読者への影響と確認ポイント
DoppelCart は国境を問わずブランドを偽装しており、日本企業や日本向けECを利用する消費者も無関係ではない。nebty のデータベースは日本語ブランド名でも検索が可能で、自社ECを運営する企業は早期に確認することが望ましい。
EC事業者が確認すべきこと
- nebty が公開した DoppelCartデータベース で自社ブランド名・ドメイン・店舗名の異表記を含めて検索する。ヒットした場合は証拠(ドメイン、HTMLアーカイブ)を保全し、ホスティング事業者やレジストラへの削除要請を検討する。
- 商品画像や説明文が自社サイトから直接参照されていないか、ログや外部参照を点検する。
- カスタマーサポートへの「注文が届かない」問い合わせが増加していないか確認し、偽サイト注意喚起を自社サイトで掲出する。
消費者が確認すべきこと
- 大幅な割引(同調査では65%など)を掲げる未知のショップでは、ドメイン名や運営者情報、特定商取引法表記(日本の場合)を必ず確認する。
- 検索エンジンやSNS広告経由で初めて訪れるショップでは、ブランド公式サイトのURLと照合する。決済前にURLの綴りやTLD(.shopなど)の不自然さに注意する。
- 不審なショップで決済情報を入力してしまった場合は、直ちにカード会社へ連絡し、利用明細を監視する。
出典
- nebty「DoppelCart: 119,000 Domains in What May Be the Largest Documented Fake-Shop Network」(2026年9月7日) — https://nebty-id.com/en/doppelcart-fake-shop-network/
この記事は、公開情報と編集部の調査・知見をもとに構成しています。内容は公開時点の情報に基づく解説であり、個別の環境への診断・対応を保証するものではありません。重要な判断では、記事内の出典や各提供元の最新情報もご確認ください。