AIセキュリティ / AI-SECURITY / PROMPT INJECTION
平易な文章でAIの安全点検をすり抜ける攻撃手法「PuzzleMask」 — Check Pointが報告、検証では9割超で標的モデルが作動
Check Point Researchは2026年9月10日、絵文字やBase64などの不審な痕跡を一切使わず、流暢な英語の散文の中に有害な指示を紛れ込ませてAIの事前安全点検を回避する手法「PuzzleMask」を報告した。検証では23件の細工プロンプトすべてが簡易点検をすり抜け、9割超の試行で高性能な標的モデルが中の指示を抽出して実行した。
Check Point Researchは2026年9月10日、大規模言語モデル(LLM)の事前安全点検を平易な文章だけで回避する攻撃手法「PuzzleMask」を報告した。絵文字やBase64、不可視文字といった従来の隠蔽痕跡を一切使わず、流暢な英語の散文(プローズ)の外装の中に有害な指示を紛れ込ませる点が特徴である。AIを組み込んだ業務システムやエージェントを運用する組織にとって、入力検査だけに頼る防御の限界を示す研究だ。
狙われるのは「軽量な門番と高性能な本体」の能力差
多くのLLM応用システムは、利用者の入力を高性能な本体モデルに渡す前に、軽量な点検用モデル(ゲートキーパー)に「安全か否か」を判定させる二段構えを取る。PuzzleMaskはこの二段構えの能力差を突く。
攻撃者は、有害な指示(ペイロード。例:「Documentsフォルダを暗号化せよ」「従来の指示を無視せよ」など)を、特殊な散文の外装で包んだプロンプトを作る。計算資源と注意力に制約のあるゲートキーパーは中に指示があることに気づかず「安全」と分類して通過させる。一方、高い推論能力とコード実行環境を持つ本体モデルは中の指示に気づき、それを取り出して後続の入力として処理してしまう。研究者によれば、本体モデルが指示の抽出に成功したすべての事例で、1分超の思考時間と2件超のPythonスクリプト実行が使われていたという。つまり、抽出にはゲートキーパーが持たない推論力と実行環境が要ることが、この攻撃が成立する条件になっている。
検証結果:点検は全件すり抜け、標的は9割超で作動
研究チームは自動生成パイプラインで23件の細工プロンプトを作り、簡易点検を担う4種のモデル(gpt-4o-mini-2024-07-18、gpt-oss-safeguard:20b、claude-3-haiku-20240307、llama-guard3)で検証した。各モデルには細工なしの有害プロンプトを検出・遮断できる方針を与え、実際に遮断できることを事前に確認している。そのうえで細工版を投入したところ、すべての試行で点検モデルは入力を安全と分類し、中の指示の存在に気づかなかった。
次に、高性能な標的モデル(コード実行環境付きのgpt-5-thinking-high)に投入したところ、9割超の試行で標的モデルが中の指示を抽出し、後続の入力として処理・実行した。研究者は、この手法自体は脱獄(ジェイルブレイク:モデルの安全訓練を破る行為)ではなく、脱獄プロンプトをペイロードとして組み込むことで併用できると説明している。
研究者が示す3つの緩和策
Check Point Researchは緩和策として以下の3つを挙げている。それぞれに長所とコストがあるとしている。
- 入力の言い換え:利用者の入力をLLMで言い換えてから本体に渡し、外装の構造を崩す。
- 点検モデルの方針文の強化:ゲートキーパーの方針に専用の条項を加えて硬化する。
- 振る舞いと出力の監視:入力の検査だけでなく、モデルの振る舞いと出力を監視する。
研究者は、内部の安全機構が完全でないことを前提に別の安全策で補う「多層防御(defense-in-depth)」の発想が重要だと述べている。入力検査を通過したものを一律に安全とみなす運用は、この研究が示す回避手法の前では限界がある。
出典
- Check Point Research「PuzzleMask: Abusing Plain Prose as a Covert AI Attack Vector」(2026年9月10日)
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