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中国語圏のサイバー犯罪市場で活動する「Tajin Group」 — Recorded Futureがフィッシング・カード不正・資金洗浄の実態を分析

Recorded Futureの調査部門Insikt Groupは2026年9月15日、Telegram上で広がる中国語圏の犯罪マーケットプレイス「保証取引所(guarantee marketplace)」で第三者ベンダーとして活動するグループ「Tajin Group(踏金集团)」の分析報告を公開した。同グループはフィッシングやカード情報の不正利用、資金洗浄を手掛け、拠点とするXinbi Guaranteeに208,848 USDT(テザー)の保証金を預けたと主張している。報告書は、匿名の電話番号やTelegramユーザー名を暗号資産で売買して身元を隠し、各国の銀行や決済ゲートウェイを悪用して資金を移す手口を整理している。

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要点

  • Recorded Futureの調査部門であるInsikt Groupは2026年9月15日、中国語を話す犯罪グループ「Tajin Group(踏金集团)」の分析報告を公開した。同グループはフィッシング、カード情報の不正利用、金融詐欺、資金洗浄を手掛けている。
  • 同グループは、Telegram上に多数存在する中国語圏の犯罪マーケットプレイス「保証取引所(guarantee marketplace)」に参加し、サービスを販売する第三者ベンダーとして活動している。報告書によれば、同グループは2025年5月から2026年4月までDabai Guaranteeで活動し、2026年5月ごろにXinbi Guaranteeへ活動の場を移した。
  • 報告書は、同グループがアラブ首長国連邦(UAE)の決済ゲートウェイCCAvenueの加盟店アカウントを2つ悪用していること、取引に使うカードの禁止対象として中東諸国・米国・パキスタン・インド・タイ・香港・日本・エジプトを挙げていることを指摘した。あわせて、不正検知を避けるためのBIN(カード番号の先頭部分)の回避リストや取引金額のルールも共有している。
  • Recorded Futureは、こうした活動が銀行や送金サービス事業者、暗号資産取引所、詐欺被害に遭いやすい個人に悪影響を及ぼし得るとしている。報告書は読者向けの具体的な対策は示していない。

犯罪の分業を支える「保証取引所」

「保証取引所(guarantee marketplace)」は、中国語を話す犯罪者どうしがマルウェアや窃取したデータベース、フィッシングキット、資金洗浄サービスなどを売買するための場である。報告書によれば、こうした取引所は2021年ごろにHuione Guaranteeが注目を集めて以降、中国語圏の闇市場に代わる場として広がった。

取引所には数百〜数千の第三者ベンダーが参加し、それぞれが異なる犯罪グループを運営している。ベンダーは取引所に暗号資産を保証金として預ける必要があり、保証金の額はそのベンダーの事業規模を示す目安になるという。

報告書によれば、Tajin GroupはXinbi Guaranteeに**208,848 USDT(テザー)**を預けたと主張している。多くのベンダーの保証金が数百〜1,000 USDT程度にとどまるなかで、この額は突出している。Tajin Groupは、取引所ごとに1つのベンダーしか同時に利用できないというルールに従い、Dabai Guaranteeでの活動を2026年4月10日に停止してからXinbi Guaranteeへ移ったという。

Tajin GroupのTelegramチャンネルが、Xinbi Guaranteeに208,848 USDTを預けたと主張している投稿のスクリーンショット
Tajin GroupのTelegramチャンネルは、Xinbi Guaranteeのベンダーとして208,848 USDTを預けたと主張している。報告書の図1より抜粋。(原典(Recorded Future)

また報告書は、取引所の運営リスクにも触れている。Huione Guaranteeは2025年半ばに閉鎖され、Xinbi Guaranteeは2026年3月に英国政府から制裁を受けた。Recorded Futureは、こうした閉鎖や制裁が起きれば、ベンダーは他の取引所へ移るだけだと分析している。

匿名の電話番号とTelegramユーザー名を買い集める

報告書は、Tajin Groupが身元を隠すためにFragment Marketを活用している点を挙げている。Fragment MarketはTelegramと連携した公式のマーケットプレイスで、ブロックチェーン「The Open Network(TON)」を基盤に、匿名の仮想電話番号Telegramのユーザー名を売買できる。仮想電話番号を使えば、物理的なSIMカードなしでTelegramアカウントを作成できる。

報告書によれば、Tajin Groupは資金洗浄用のチャンネルのユーザー名を2025年10月20日に**88 TON(約149.48ドル)で取得した。さらに、SIMカードに紐づかない電話番号を2025年12月18日に1,899 TON(約3,053.52ドル)**で購入している。Recorded Futureは、SIMカードの購入には一般に身分証などの提示が必要になることから、あえて高額を払って匿名の番号を購入する行為を、捜査機関の追跡を難しくするための身元秘匿の手段と分析している。

同グループは、こうした経路で100以上のTelegramユーザー名と複数の電話番号を売買していたと報告書は記している。

フィッシングから換金までの具体的な手口

報告書は、Tajin Groupが手掛ける犯罪の範囲を次のように整理している。

  • POS端末やQRコード、アプリ、ギフトカードサイトを悪用した金融詐欺と、請負型のハッキングサービス
  • 各国のATMや銀行振込を使った資金移動
  • NFC(近距離無線通信)の中継技術を使い、カードを物理的にATMへかざすことなく現金を引き出す「ゴーストタッピング」
  • CVV(カード裏面の確認番号)を含むカード情報の売買
  • 米ドル、シンガポールドル、韓国ウォン、日本円、UAEディルハムなどの通貨交換

なかでも報告書が詳しく説明しているのが、決済ゲートウェイの悪用である。Tajin GroupはCCAvenue UAE(インド系決済事業者CCAvenueのアラブ首長国連邦拠点)に加盟店アカウントを2つ運用し、他の犯罪グループが窃取したカード情報を入力するための決済リンクを発行していた。報告書では、このリンクから割り出した加盟店名が「MOON ENTERPRISE TRADING LLC」と「SUNWEL ENTERPRISE TRADING LLC」だったこと、同じ名称の企業は見つからなかったもののUAEにはよく似た名称の実在企業が登録されていたことが指摘されている。Recorded Futureは、Tajin Groupが実在のUAE企業になりすましている可能性があるとしている。

Tajin Groupは、決済リンクを利用する他の犯罪グループに対し、BINの回避リスト取引金額のルール、窃取したカード情報の提出方法を指示していた。報告書によると、この禁止リストには中東諸国、米国、パキスタン、インド、タイ、香港、日本、エジプトで発行されたカードが挙げられている。Recorded Futureは、こうした指示を不正利用の検知を避けるための運用ルールと分析している。禁止リストは国ごとに銀行名とカード番号の先頭部分(BIN)まで細かく指定されており、新たな禁止対象が現れた場合は30分で有効になると案内されていた。金額については、100〜20,000ディルハムの範囲を避けることや、同じ金額を繰り返さず小数点以下を含むランダムな値を使うことも指示されていた。

なお、報告書は日本で発行されたカードが禁止リストに入っている理由については説明していない

Recorded Futureは、Tajin Groupが中国本土の利用者と中国の銀行を主な標的にしているとも記している。報告書は、同グループが自らの説明のなかで、中国銀行(BOC)や中国建設銀行(CCB)が提供するAI関連の仕組みを不正な資金移動に使ったと述べている点も挙げている。加えて、報告書は中国東方航空のアプリを使ったカードスキミングの手口を紹介している。報告書は、このアプリが中国東方航空の正規アプリなのか、Tajin Groupが用意した偽アプリなのかを確認できていないとしている。さらに報告書は、窃取したカード情報で香港の宝飾品小売Chow Tai Fook Jewelleryに支払いを行い、換金しやすく持ち運びやすい高額品に資金を移していた事例も紹介している。

2026年4月に方針を転換

報告書は、Tajin Groupが2026年4月16日にTelegramで公表した告知の内容も分析している。この告知で同グループは、海外で発行されたカードの処理依頼を今後は受け付けないと宣言した。理由として、海外での規制が厳しくなったことや、仕入れたカードが以前にどこで使われたかを確認できないことを挙げている。Recorded Futureは、銀行側の規制強化や競合グループとの競争が背景にあると分析している。

同じ告知のなかで同グループは、出金手段の一覧も公開していた。報告書は、標的の口座が中国工商銀行(ICBC)や蘭州銀行にある場合には、暗証番号なしで海外送金できるケースがあることなどを、同グループが具体的に説明していたと記している。Recorded Futureは、こうした説明から、同グループが中国本土の利用者を標的にしていることが分かるとしている。

さらに同グループは、連携先として、海外の遠隔操作サービスや、クラウドストレージを使った情報窃取(「同期パネル」)、会議資料を装って侵入する事業者の募集も呼びかけていた。報告書によれば、対象として英国、ドイツ、カナダ、台湾など30以上の国・地域が挙げられていた。

Tajin Groupが2026年4月16日にTelegramへ投稿した告知のスクリーンショット。海外カードの処理依頼を停止することや出金手段の一覧が中国語で示されている
Tajin Groupが2026年4月16日に投稿した告知。海外カードの処理依頼の停止や出金手段、連携先の募集が記されている。報告書の図7より抜粋。(原典(Recorded Future)

Recorded Futureの見通し

報告書は、中国語圏の保証取引所が増えれば、ベンダーは移行先を選びやすくなり、取引条件の交渉もしやすくなると分析している。Tajin Groupは取引所への依存を減らして自らの評判を高めようとしており、顧客との直接取引を増やそうとしているという。

Recorded Futureは、今後も匿名の電話番号やTelegramユーザー名を暗号資産で購入する動きが広がると予測している。暗号資産を相互に交換してTONに変えることが容易であれば、捜査機関やセキュリティ研究者による追跡はさらに難しくなる。

Recorded Futureは、これら一連の活動が銀行や送金サービス事業者、暗号資産取引所、詐欺被害に遭いやすい個人に悪影響を及ぼし得ると指摘している。報告書は読者向けの具体的な対策は示しておらず、分析と見通しの提示にとどまっている。

出典

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